与沢翼は、かつてホリエモンに対抗しうるかのような印象を与えつつ彗星のように現れて、しばらく週刊誌やSNSでの話題をさらい、その言動の派手さや傲慢さ、ライフスタイルに至るまで、時代を代表する寵児のように持て囃されたこともありましたが、税務署に税金を納める資金を取り分けていなかったというような初歩的な経営上の失策を突かれて、あっさり会社を畳んで東南アジアに逃れたのち、その後はさらに中東方面に流れて日々を送っているようです。
基本的には、与沢翼はまともな経営手腕も人間力も無く、その破天荒さでは同類とも目されたホリエモンや孫正義あるいはドナルド・トランプといった実際の「成功者」とは次元の異なる人物だったようですが、ここではともかくインターネットビジネスという切り口でその功罪について検証してみたいと思います。
以前にも書いたことがありますが、与沢翼に関しては、ある段階までは和製トランプ的な、その露悪趣味的な傾向や成金的な消費形態、派手で大げさな言動などいろいろな要素が重なって、意外に成功するかもしれないという漠然としたイメージ反感のようなものがありました。
今となっては、そういう生き方はやはり長続きしなかったことが明確に跡付けられていますが、与沢翼の絶頂期を振り返りながら、贅沢三昧や放漫経営をしなければ通用したかもしれないビジネスモデルを再検討してみます。
与沢翼は本物だったのか?
ブログメルマガアフィリエイトに関して、いろいろ調査研究を進める中で、与沢翼の映像資料なども幅広く入手し数十時間程度視聴してみたのですが、違和感や反感を感じつつも、結構自分に近い考え方や行動原理を貫いてきているビジネス成功者であるとの認識に至ったことがありました。
まずフリーエージェントという考え方ですが、年功序列の崩壊や大企業至上主義の消滅に関しては、リーマンショック以来益々急激に進んでおり、社会的風潮となってきていると言えるでしょう。
実際多くの人が実行しているとは言えませんが、フリーエージェント的なスタイルで生き抜かなければいけない時代が来つつあることは、もはや誰も否定出来なくなっていることと思われます。
要するにもはや頼るべき組織や会社そのもの、年金制度も含めて、全てがぐらついてきており、年金制度も含めて自前の生活手段あるいは、資金製造マシーンのような機構を持っていないと、なかなか安心出来ない時代になってきているということは間違いないところなのです。
現代を生きる指針
それではそういう中で具体的にどのように対応すれば良いのかと言うことになりますが、基本的には現在上手くいっている人間のやり方を踏襲してみたらどうか・・・ということになるんでしょう。
では今一番うまくいっているのはどういう立場の人かと言うことですが、まず大企業のサラリーマンで無いことは間違いないでしょう。
パナソニックやソニー、シャープなどもリストラの嵐ですし、一時隆盛を極めたヒルズ族もホリエモンの凋落と共に同様な手口を使えなくなり、鳴りをひそめることとなりました。
現時点では、ネオヒルズ族=ニューリッチと呼ばれる人々が対応してきており、その動向や生き方、稼ぎ方が注目を集めつつうあると言うところでしょう。
アメリカ発でも「週4時間だけ働く」というティモシー・フェリスの本が全世界でベストセラーになっていましたが、このような行き方もそれに類するものと言えるでしょうか。
組織に属さない生き方
要するに、組織に属さず、あるいはセミリタイアし、自らの非常に規模の小さなスモールカンパニーを持って、自前の資金確保マシーンを運営しながら、自由にやりたいことをしながら過ごせる状況を確立していることが新しいニューリッチの在り方でしょうか。
日本のニューリッチは、そういう中でも多少忙し過ぎ、あるいは働き過ぎ的な要素がありそうな気がしますが、本来の志向としては、集金マシーンの確保で浮いた時間を一層の稼ぎに充てると言うよりは、より貴族的な文化的活動や学術的活動、芸術的活動と言った趣味や教養を深める時間に充てるような生き方が、今後広まっていくのが理想の様な気が個人的には強いですね。
資金確保マシーンの構築
ここで最大のポイントになってくるのが、経済的な自立を支える資金確保マシーンをどのように構築するかと言うことになるかと思いますが、ここに関しては、日本でもアメリカでも大枠としての手段は同じで、進化するインターネット環境を如何に活用するか、にかかっていると言って良いでしょう。
与沢翼の話を聴いていて、結構うまいやりかただな・・・と思った最大のモノの一つは、「free」の活用ですね。
インターネット時代においては、価格の概念が崩壊しつつあり、「free」で提供出来るものも増えてきていますが、与沢翼は「自分が10持っていれば、そのうち9まではfreeで提供して信頼を勝ち得て、残りの1の提供のところで資金を回収すれば良い」という透徹した考え方を繰り返し表明していましたが、全くその通りだと思います。
まずはfreeで非常に価値のあるものを幅広く提供することで、相手に得をさせた上で、あとから回収していくと言うのは事実上のwinwin関係のようなものであり、相手側も納得づくでお金を出してくれると言うことになってくると思います。
ネットビジネスではコンテンツが生命線
またネットビジネスは、コンテンツ提供ビジネスであり、コンテンツがある限りは、問題なく続けられるが、コンテンツが枯渇すると存続が危うくなるともコメントしていました。
確かに、無から有を生み出すためには尽きることなくコンテンツを産みだし続ける必要がありますが、コンテンツさえ無限に産み出せるのであれば、まさにロックフェラーの油田やロスチャイルドのダイヤモンド鉱山のようなもので「まさに無尽蔵の資金源を確保したようなものである」と言いきれると思います。
例え、現時点で9/10をfreeで提供しても、明日の段階でコンテンツが自己増殖していき分母が20になっていれば自分自身は11/20の資源を既に手元に確保しているわけで、何も資源枯渇に困ることは無いわけですよね。
ネオヒルズ族への提言(もし存在すれば・・・?!)
ところで、与沢翼(=ネオヒルズ族)は六本木、乃木坂、防衛庁エリアと言った界隈の超高級賃貸マンションに住んでいましたが、このあたりは日本とアメリカの違いと言うか、アメリカのセレブって郊外の宮殿のような豪邸に住むことが多いですよね。
まあまあ私だったら、都心エリアにも必要に応じて居住スペースは持つものの、ニューリッチのあり方としては本邸は郊外の緑豊かな宮殿風豪邸っていうのが良いと思いますがねえ。
可能であれば日本建築のあり様を刷新するような設計を有名な建築家に頼んで、まずは建築文化にも影響を与えるような金の使い方をするっていうのは、ニューリッチ的にはアリじゃないかって思うんですが・・・
日本の経済をけん引するトップランナーを標榜するのであれば、金の儲け方だけでなくライフスタイル全体も憧れの対象になるような生き方をしてもらえると判り易いでしょう。
貴族と言うのは、成金とは画然と異なるものでなければならないはずです。
例えば江戸時代の徳川の威厳は、江戸の町のどこからでも仰ぎ見られる広大で絶対的な江戸城の存在に由来していたような気がします。
それを現在に置き替えてみれば、中身は確かに超高級とはいえ、オーナーの創意工夫も許さず、単にお仕着せのように充てがわれただけの都心部の超高層賃貸マンションはあまりにも貧弱であり、そこからは時代精神のカケラも感じられないのは、恐らく私だけの感慨ではないでしょう。
さらに与沢翼は、「今回の二度目の倒産で自分の言葉に酔ってしまっていた。松下幸之助の言うことの意味が初めて分かった。全ての価値観が一旦崩壊した」というようなことをFacebook上で述べていましたが、ともかく道理を踏み外した人間の末路の典型を演じた印象もあります。
上に立つものは、単に覇道的な力だけでなく、王道的な意味でも周りの人をリードする存在であるべきではないでしょうか。
私もここらで、四書五経などを読み直して、自分の足元を再確認しようかな、と思う今日この頃ですね。
ちなみに、2015年4月5日付の与沢翼発行のメルマガによれば、あれだけ世間を騒がせたネオヒルズ族なる用語法を与沢翼本人が幕引きする、と言う記事がありましたが、何度も塀の上を歩き破綻の危機に瀕しながら合衆国大統領に上り詰めたドナルド・トランプや収監後も一定のビジネス上の影響力を維持し、世論も動かしかねない見識を持ち、莫大な資産を保有するホリエモン辺りに較べて、与沢翼とその牙城の呆気ない崩壊振りがあまりにも好対照ですかねえ。